No.178への返信

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  • 奇跡【金赤風】うすらエロも無

    註:21話アナザー風


    「広すぎだぜアマンダ、何か手掛かりはないのか!」
    「マレクについては一切教えてくれなかったから…、とにかく探すしか」
    「見つけた頃にはここが焼け野原になってなきゃいいがな……」
    「そうね……」
    いつになく弱気なアマンダの声と同時に、不意に誰かの声が聞こえた。
    ヘルマンは666を急停止させ、デモナイズした体を元に戻した。
    「なんか聞こえなかったか?」
    アマンダは数メートル先でパラディンを半回転してヘルマンに向き直った。
    「何も。どうしたの、ヘルマン?」
    「先のブロックに行ってくれ!忘れ物があるみたいだ」
    「ちょっと、ヘルマン? ここまでのルート、なにひとつセンサーに引っかかってこなかったわ……ツヴェルフ(敵)のパラディン以外は!」
    アマンダの声に反応しつつ、ヘルマンは666を反転させ、アマンダに背を向けた。
    「見落とした横道、あっただろう? 覗いてくる。すぐ追いつくさ!」
    「先にひとりで行けっていうの!?」
    「お前の話が間違いなければパラディン部隊はほぼ壊滅している。ならば二手に分かれてもそう問題はないはずだ」
    「気楽に言ってくれるわね」
    「信頼しているのさ」
    「わかったわ」
    そう言ってアマンダはナビゲーションマップで合流ポイントを示した。
    「了解! もしも、マレクがいたら必ず連れて行ってやるぜ!」
    ヘルマンはまた赤い悪魔の姿に変身する。
    「幸運を祈るわ、ヘルマン。私も最善を尽くす!」
    アマンダは遠ざかるヘルマンの帰還を信じ、ヘルマンはある確信を持って、走り出した。

    頭の中に直接響く声に従って、ヘルマンはいくつものパラディンの残骸の隙間をぬって走り、倉庫ブロックにいくつかある脇道のひとつに入った。
    そしてある倉庫の扉の前で、スピードを落とした。
    何か、薄っぺらい物が落ちている。ヘルマンは666を止めた。
    歩く風圧だけで何か――白い紙片――は、チリ一つない床をスッとすべった。
    「おっと……逃げンなよ」
    人の姿に戻りゆっくりと近づき拾い上げた。
    やや厚みのある白い紙は、ヘルマンの指になぜか馴染むようだった。
    「ンだよ、こんな紙ッペラ。なんのヒントもねぇ……」
    不満を漏らしながら、ふと、裏返して、みる。
    「……!」
    そこには在りし日のゲルト・フレンツェンとヘルマン・ザルツァが笑っている。
    「チャンプ……!」
    自分がXATスーツに常に忍ばせていた写真――あの墜落事故で自分と共に焼けてしまったであろう写真――だった。
    どのような原理でここに存在するのかはわからなかったが、人が悪魔になって生き返るならば、こんな奇跡があっても不思議はない、いや、これは天国のゲルトがさしのべてくれた手かもしれない……ヘルマンはそんな風に納得した。
    万感の思いをこめ、写真を胸に押し当てる。
    「何度オレの前に蘇る気だよ……ヘヘッ」
    ヘルマンの心は震え、熱い涙がこみ上げた。
    するとまた声が、今度ははっきりと頭の中に響いた。
    『ヘルマン、おれを信じた少年を救ってくれ』
    「ゲルト……」
    「ああ、わかった! 必ず救ってやる!! 俺があんたに救われたように!」
    今やらなければならないことがある。ヘルマンはたくさんの思い出の余韻をかき消し、修道服の内ポケットに手早く写真を差し入れた。
    (生きる道はある……)
    ゲトルがくれた言葉が体中を駆けめぐる。活力が漲る。
    「やっとオレも、一人前になれそうだぜ!」
    このような体にされた怨みも、底知れぬ力への畏れも、仲間の死への絶望も、死への恐怖も……すべてを打ち払ったヘルマンがいた。
    「ここでいいって言うんだな、ゲルトォッ!」
    ドアに向かい、ハルバードを一閃、ショートしたドアから鈍い音と火花が散った。
    研究所員らは突然の赤いデモニアックの来襲に絶叫した。
    「感染するぞ!」
    「気をつけろ!!」
    慌てふためき次々に通路へ飛び出してくる研究員たち。
    「来るなぁぁぁっ!」
    銃をとり応戦しようと引き金を引く者もいたが、ヘルマンの体まで銃弾が届かないと見るや、銃器を放り出し泡を喰ってその場を逃げ出した。
    落ち着ききったヘルマンは、ただ、佇むだけだった。

    一騒動収まると素早く倉庫の中に入りこんだ。
    様々な機械が研究員のプログラムに従い整然と働いている。間違いなく研究室だった。
    「ったく、倉庫とか嘘吐いてんじゃねーよ!」
    ガラスで仕切られた奥の部屋、そのカプセルの中でマレクが眠っていた。以前と変わらぬ人間の姿にヘルマンは安堵した。
    (チャンプ、あんたを信じたオレは間違いじゃなかった……)
    奥の部屋へと続く中扉は厳重に閉ざされていたが、ヘルマンはデモニアックの力でドアのアクセス権を制御し、簡単に侵入した。
    カプセルを開いて、マレクの体を揺すり抱きしめた。
    温かい体、間違いなく生きている……。
    「マレク……よかった!」
    そのまま担ぎ上げ、倉庫を出た。
    「よし、こんなところすぐにオサラバしようぜ」
    マレクを666に乗せ、ヘルマンはゆっくりと走り出した。
    静かに息をしているだけで目覚める気配はない。だが、ヘルマンは構わず話しかけた。
    「聞こえているか、マレク? 目が覚めたら、チャンプとオレにお礼を言えよ!」
    内ポケットの写真を手で確かめ、ヘルマンは少し笑った。
    「お前がちゃんと言ったかどうか、ゲルトに聞きに行くからな!」

    アマンダのパラディンが、合流ポイントに見えた。

    [178] 九郎 (2008/09/15 Mon 07:34)


    RE

    クラビット視聴組21話まで見て「シドウの声に反応するヘルマン」or「折り鶴が違うものだったら」の後者で書き始め、昨日の茶で最新話の概要に触れこんな感じに。
    なにより小坊並みの文章力ですみません。

    [179] 九郎 (2008/09/15 Mon 07:41)


    確かに

    こういうパターンもアリですなw
    シドウの出番が無かったら、この展開がいいと思います。
    ヘルマン……(´・ω・`)

    [187] イーゴ (2008/09/15 Mon 18:19)


    アリかと。

    「聞こえているか、マレク? 目が覚めたら、チャンプとオレにお礼を言えよ!」

    ここのセリフが好きですよ〜
    ああ、ますます赤がいい男になってしまう。&写真に納得がいく。

    [196] hanage3 (2008/09/16 Tue 17:39)