ふと、ザーギンが動きを止め、ジョセフの方をじっと見つめているのに気付いた。
「欲情しているのか…ジョセフ」
「なっ……! 違う!」
必死になって否定する。その時、犯され貫かれるマレクと視線が重なる。その目に浮かぶ絶望の色に耐えきれず、思わず顔を伏せる。
「ははははは……これは傑作だ。これに目をかけたのは身体目当てか」
「違う……違う……」
消え入りそうな声で否定する。だがザーギンは容赦なく更なる絶望の淵に追い立てる。
「これはすまなかったな。だが…」
「あぐぅっ!」
再びマレクに向き直り、更に激しく腰を打ち付け始める。
「悪いが先に使わせてもらうぞ」
今度は円を描くように、かき回しながら突き入れる。先ほどより激しい苦痛に、マレクは目を見開いたまま声もなく口を開けている。そして更に責めたて続け…
「……あ、う、あああ……」
既に放心状態のマレクの中に白濁した体液を放った。ザーギンが逸物を引き抜くと、トロトロと血の混じった精が流れ出る。ジョセフはただ、それを見ていることしかできなかった。
それから一体どれほどの時間が経ったのだろうか。たったの数分かもしれないし、あるいは数時間かもしれない。だが蹂躙される者達にとっては、無限に続く時間であるかに思われた。
「そういえばねジョセフ、人間の心を壊すには、強姦は最も効果的な手段なんだそうだよ」
乱暴に腰を打ち付け、抉るようにマレクを犯し続けながら、ザーギンはジョセフに語りかける。まるで世間話でもするかのような何でも無い口調で。
「身体的なダメージもさることながら、特に精神に与える苦痛がとても大きいとか」
もはや枯れた声で救いを求める気力すらも失せたのか、少年は激しく揺さぶられ、貫かれるのにぐったりと身を任せている。光の失せた目からは涙が流れ続け、口の端からは涎と共に時折「ひぐっ」「ううっ」としゃくりあげるような嗚咽と呻き声が漏れる。
「意思や尊厳を全て否定され、己の身体がモノとして扱われるのは、死に勝る苦痛をもたらすそうだ」
度重なる抽挿に、マレクの尻穴の粘膜は痛々しく腫れ上がり、抜き差しする度に外にめくれんばかりになっている。
「彼は今、永遠に続くとも思われるような地獄の苦しみを味わっているのだろうね」
そう言ってクスクスと笑う。それこそ心底楽しそうに。
「だったら何故…」
掠れてひび割れた声でジョセフは呟いた。
「だったら何故、俺を直接痛めつけない!」
大声で怒鳴った途端、またも腹の傷が灼けるような痛みを発し、ジョセフは咳き込んだ。身体の下の血溜まりがじわりと広がるも、構わず叫び続ける。
「マレクは関係ないだろう! 俺を苦しめたいなら、俺一人を痛めつければいい!」
「それじゃあ意味がないんだよ。ジョセフ」
物分かりの悪い生徒の質問に答える教師の口調でザーギンは答えた。
「君自身を傷めつけたところで与えられる苦しみはたかが知れている。特に君のように優しすぎる男にはね」
その間も激しく腰をぶつけるのを止めない。バシリ、バシリという乾いた音が響き、結合部からはグチュグチュという湿った音がする。
「こうやって他人が傷つけられるところを見せつけたほうが、効率がいいんだよ」
嬲られ続けるマレクの口から今一度、泣き声とも呻き声ともつかない嗚咽が漏れた。
「愛するものが蹂躙されるのを、為す術もなくただ黙って見ているしかない時に感じる無力感と絶望は、君もよく知っているだろう?」
「この…っ、下衆が……っ」
陵辱はその後も続き、やがてザーギンがマレクの身体から己のものを引き抜いたとき、マレクはもはやなんの反応も返さなくなっていた。
ジョセフもまた、心という心をすべて踏みにじられ、陵辱されつくし、屍も同然になっていた。よって、屍には用はないとばかりに彼ら二人を打ち捨てて去っていくザーギンを、ただ為す術もなく見送るほかに術もなかった。
「すまない……マレク……すまない」
滂沱の涙を流しながら、消え入りそうな声でジョセフは許しを乞うた。だがその声はマレクに届くことはない。伸ばす手もまた、届かない。
打ち捨てられた神の家に、慟哭が響き渡る。愛する者の受けた痛みを嘆く声が。己の非力さを呪う声が。誰一人として聞く者がいないまま。
Fin.
[94] 640 (2008/08/27 Wed 00:13)