ようやく口を離され、しばらく息を整えた後、ジョセフが苦しげに呟いた。
「マレク…こんなことをして…本当に気が済むのか…? そんなに、自分の身体まで痛めつけるようなことをして…」
その独白にも似た呟きを聞き取ったマレクが、一瞬わけがわからないといった表情で小首を傾げる。だがすぐに笑みを浮かべた。今度は憐憫の情の入り混じった、弱った獲物をいたぶる者の笑みを。
「優しいんだね。ジョセフは。こんな状況で人のこと心配していられるんだ」
そして身を起こし、ジョセフの腹筋に両手をつくと、一度落とした腰を再び持ち上げる。
「でもその余裕がいつまで持つかな?」
言うが早いが、今度は一気に腰を落とす。
「くっ!」
そして再び持ち上げると、更に激しい勢いで腰を落とす。汗にまみれた肌と肌がぶつかり合い、湿った音が響く。忘れかけていた快楽を急激に与えられ、マレクの中で僅かに萎えかけたジョセフの雄が再び硬さと射精感を取り戻していく。
再びあと少しで解放、というところで、マレクは急に動きを止めた。
「言ったよね。勝手にイっちゃ駄目だって」
腰を持ち上げたマレクとジョセフの身体の間に細い触手が入り込み、ジョセフの欲望の根元に巻き付いて締め上げる。
「ひぐっ!」
「僕はまだイきそうにないんだからさ」
再び腰を動かし始める。それも今度は今までのような激しい動きではなく、ゆっくりと味わうような動きで。幼い顔に恍惚の表情を浮かべて、身体の後ろに手をつき、腹につくほど反り返った肉茎を見せつけるようにしながら腰をくねらせる。
だがジョセフにとって、解放を許されず間断なく与えられる快楽はもはや快楽というレベルではなく、暴力的な責め苦となってジョセフを責めさいなむ。
「あぐうっ、ぐううっ、うわぁぁぁぁ!」
身を灼くような快楽と苦痛が交錯し、ジョセフは身も蓋もなく絶叫した。
「ねえ、苦しい? 辛い?」
腰を前後左右に動かしながら、自らも快楽にうわずった声でマレクが問いかける。
「でもジョセフに嘆く権利なんてないんだよね。だってこれはジョセフに与えられた罰なんだもの」
だがその声は間断なく上げ続けるジョセフの悲鳴に紛れ、かき消されてしまう。
「こんな程度じゃ終わらないよ。それこそ君が狂うまで、壊れてしまうまで、苦しめて苦しめて苦しめて、愛してあげる」
そして婉然とした笑みを浮かべると、マレクはジョセフの男根を触手の縛めから解き放った。
「ああ、僕もうイきそうだ。解放してあげるから、一緒にイこう、ジョセフ…」
その途端、マレクの中のジョセフの分身がビクビクと脈打ち、マレクの中に精を解き放った。
わずかに遅れたタイミングで、自分の腹の上にマレクの精が飛び散る感触を最後に、ジョセフの意識は闇に沈んでいった。
XAT本部の研究棟の一室。ベッドの上には相変わらず意識の無いジョセフが横たわっている。その寝顔は苦しそうで、食いしばった歯の間からは時折呻き声が漏れる。傍らのモニターは一本調子な機械音とともに数値やグラフを表示している。
と、その時画面にノイズが走り、角の生えた少女、エレアの姿が浮かび上がる。
「まったく、何て夢をみていたのかしら…あなたの深層心理下の願望なのかしらね。だとしたら大したものだわ」
そう呟いた直後、ジョセフが目を覚ました。眠っているときの悪夢の時間は終わりだ。今からは現実の悪夢と戦わなければならない。
[77] 640 (2008/08/25 Mon 01:58)