摂氏44度の血中。
凝固する蛋白質は、そのまま壁という鎧を隔てた。
黒い身体。
全てを記憶する碧い枢軸。
いつか見た記憶。
強く刻まれた、王者の彼。
妙に冷めた視界の中に、過去の英雄は眠っていた。
「…ゲルト=フレンツェン…」
顔の傷は痛々しく、土気色を帯びていた。
右手には、やはり消えない紋章。
死して尚、この呪縛が消えないのが、己のせいだと思うと、眉をしかめるしかなかった。
「…すまない…」
天国、地獄にすら行けずに、この血に縛り続けてしまう。
「せめて…」
横たわる彼の頬に手をかけ、何度か名前を呼べば、長い睫毛が揺れた。
過去を刻んだ傷は、今なら、彼は癒やせるだろう。
いつか、またあの時のように、"親友"と走る日の為に。
end
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いきなり失礼致します。
白が幸せになるには、誰がいいんだろうと考えた時、黒だけな気がいたしました。
赤だと、桃がいるので、赤も白も傷ついてしまう…かな、と。
最終回では、黒と白がラブラブになっていたら面白いな、と思いました。
[403] キズナ (2009/02/23 Mon 18:00)