【摩周×白】ブラすれ・3

数日前に彼女から今回の件を頼まれた後、俺は今日まで悩み、考え続けていた。

どうすれば自分も美味しい思いが出来るか。

あの女を喜ばせる為だけの、自分に益のない真似はしたくない。
俺だって楽しみたいんだ。
相手と自分両方が幸せになれれば、それが最良じゃないか。
そう、きっかけをくれたあの女と俺、そして今目の前にいる男と俺の両方が幸せになれればだ。



「いい眺めだな」
後ろ手に拘束され、ブラジャーだけ身につけ、足を閉じられずむき出しの下半身を誘うように開くしかないゲルトの姿に、思わず陳腐な発言をしてしまった。
手首の下着拘束は、冷静でさえいれば解けなくはないが、今のこいつが冷静でいられるはずがない。
加えて、仰向けになると後ろに縛った手は体の下敷きになり、より自由に動かせなくなる。
「何故、こんな事を…」
「何故って…お前が望んだんだろ。こうなることを」
「なっ!」
「こんなに濡らして欲しがってるくせに」
「っ!…」
一番触れてほしそうにしている部分をあえて避け、太股の内側を撫でてやる。
直接触れるよりも意識してしまうのか、ゲルトの表情が更に険しくなった。
「ここに来てずっとビクビクしていたのも、俺に触れてほしかったからじゃないのか」
「違う!」
「そうか?」
腰を落として前かがみになり、ブラジャーに手を掛ける。
「ここも」
ブラジャーの中に人差し指だけ入れ、この状況のきっかけになった箇所を軽く叩く。
「最初に指入れた時には既に固くなっていたぞ」
「そ、それは…胸のところにつけているのが当たって擦れて、だから…」
ゲルトの言葉は嘘ではないだろう。
胸に密着するブラジャーを見ているだけで、擦れる感覚が伝わってくる。
「なるほど。だからこうして掻き乱してほしかったと」
「違…あ、あああ…」
更に前に身を乗り出し、今度は両手全体をブラジャーの中に突っ込みまさぐる。
「ああ…はぁ、っあ…」
「随分と気持ち良さそうじゃないか」
「違う、これは…んん」
あがる声を押さえきれなくてもどかしいだろうに。
「なあ、こっちを見ないのか」
「………」
懸命に顔をそらし、首を横に振る。
後ろから手を突っ込んだ時もそうだったが、ゲルトは俺の手の動きを見ようとしない。
触れられる感触だけでなく“ブラジャーの中で蠢く手”という光景が、男として視覚的に欲情を煽られるのだろう。
やってる本人が実際に煽られているのだから間違いない。
「こうしていると女を抱いているのかと錯覚してしまいそうだ」
両手で胸を揉みながら、顔をそらす事で無防備になった首筋に口づける。
「いやっ、あぁ……っ」
しかし実際は、ちょうど腹の辺りに当たっているものが女と戯れている錯覚を許さない。
俺は優しいから、それが自分のバスローブの結び目に当たるように、体の位置と動きを意識してやる。
こうすれば、お前の体が望む刺激を与えられるだろう。
「くっ……っ………」
今にも弾けてしまいそうなそれを、ギリギリ薄皮一枚の理性で押さえ込んでいるようだが、所詮は薄皮。
無駄なあがきにピリオドを打つべく、ブラジャーから手を引き抜き身を起こす。そして…
「っ…ぁ…あああああっ!!」
ちょっと相手をしてやったらあっさりと、薄皮の理性は破れ裂けた。

あの女がなぜ下着を2枚ずつ買ったのか、その思考は今も分からない。
しかしそのおかげで、明日の下着を気にせずにゲルトの体に自分で吐き出したものを浴びせる事が出来たのだからよしとしよう。
呆然としている姿をこのまま眺めているのもいいが、そろそろ俺の方もちゃんとした刺激が欲しい。
再び身を乗り出し、ゲルトの髪を掻き撫で、輪郭をなぞるように右手を頬から顎へ移動させる。
「マシュー…?」
「自分だけ楽しんでおいてハイおしまいなんて、つれない事は言わないよな」
薄く開いた口の中に親指を浅く入れ、左手を左膝の裏に差し込み足を持ち上げる。
「上と下と、どちらで俺を楽しませてくれるかお前に選ばせてやるよ」
言葉に合わせて親指を付け根まで入れ、持ち上げた足を引き寄せ自分に密着させる。
「言ってる意味、わかるよな」
返事がなくても、視線の定まらない目を見れば十分に伝わっているのが分かる。
「さあ、どっちにする?」
究極の選択を迫られゲルトは悩むだろう。
けど残念だったな。
お前がどれだけ悩み、どう答えようとも、お前がこの後たどる道は一つしか用意されてないんだよ。



「すまん!」
「いや、今更謝られても…俺はもう大丈夫だから」
「何を言ってるんだお前は」
「えっ」

翌晩、俺は電話の向こう側にいるゲルトに形だけの謝りを入れた。

「そっちじゃなくて昨日のあの話…あれな、どうも酒の席での冗談だったみたいなんだ」
これがテレビ電話ならあいつの驚く顔が見られたのだが、残念ながら声で想像するしかない。
「いやあ、俺も迂闊だったよ。実物まで出されたら普通信じるだろ?それが忘年会の余興用だとか言うもんだからさぁ」
電話の向こう側にも伝わるように、少しオーバーに苦笑いをしてみせる。
「そういうわけだから、もうそれ、外してもいいぞ」
「いや、今言われてもどうしたものやら…」
そりゃそうだ。こっちは言われて困るタイミングを見計らって電話をかけたわけだし。
「そうみたいだな…どうやら彼女とデート中のようだし」
「!」
「しっかり聞こえてるぞ、声」
そう。さっきからお前の後ろで聞き覚えのある、しかしいつもと違う猫を被った声が聞こえてるんだよ。
「で、どうだ。楽しんでるか?」
「え、ああ、まあ」
先程までとはうってかわって、穏やかな喜びを含んだ声に変わる。
「今日はいつにもまして楽しそうにしているから、つられて俺も…こういう時間の使い方もいいものだな」
しみじみと幸せを噛み締めているようで何よりだが、肝心な事は忘れていなかったようだ。
「それでも、今もバレないか不安な気持ちは拭えないのだが…」
そいつが楽しそうにしている本当の理由を教えてやりたいが、代わりに、今はこの言葉を贈ろう。
「いい彼女を持ったよな、お前」
「えっ、どうしたんだいきなり」
「いやあ、お前の惚気話を聞いてたらつい」
「惚気話って…」
「これ以上邪魔するのは野暮だから切るぞ、じゃあな」

受話器を置いて安心したのだろう。
「…くっ…ふふふ…っははははは!」
俺が今まで堪えていた分、笑いが止められなくなっていた。
先程までの爽やかな自分の芝居に。
あの女の演技力の片鱗が感じられる声に。
全てが虚構で出来ていると知らず、呑気に幸せを享受しているあいつに。
全てが滑稽すぎて笑うしかなかった。

同時に昨夜のあいつを思い出し、まだ酒が入っていないのに酔いそうになった。

あの後ゲルトに何度言ってやりたかったか。
お前が今そんな姿になっているのは、お前の恋人が元凶なんだと。
彼女にその気はなくても、彼女の悪戯心が俺の悪戯心にも火をつけたんだと。
俺の女が用意した玩具で、俺はお前とこんなに楽しい時間を過ごしているんだと。
もっとも、あの時のお前に言っても確実に聞いてなかっただろうけどな。

俺のぶちまけたもので顔中を汚し、ブラジャーと同じ薄いピンク色に肌を染めあげながら俺に貫かれ、突き上げられ、涙を浮かべて喘ぎ続けていたのだから。



本当、いい彼女を持ったよな。
お前も、俺も。

[377] 独逸超人 (2008/12/24 Wed 00:15)

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┗[381] 言い訳三昧 独逸超人 2008/12/27 Sat 22:04
┗[382] Re^4: 【摩周×白】ブラすれ G779 2008/12/27 Sat 22:27
┗[383] 鬼畜すぐる…! 綾鷹 2008/12/29 Mon 10:27
┗[384] コメントありがとうございます 独逸超人 2008/12/31 Wed 02:11