(白赤)ガソリン (タンクトップver.)

朱色の空、夕暮れのサーキットは人影もまばらだ。三々五々に集まりだした素人レースチームは、明日に向けての準備を中断し、ミーティングも兼ねた夕食へと繰り出す。エンジンの音、金属のぶつかる音、雑談と笑い声、風の音、雑多な音が耳元を通り過ぎる。どこか懐かしく遠い場所は、サーキットを初めて走った駆け出しのころを思い出させる。
 「彼」がもう一度、サーキットに現れたと、人づてに聞いた。ヘルマンからではない。こうやって自分の耳にも届くのだから、どこかでだれかに話はしているのだろう。我ながら傲慢だと呆れるが、彼の口から聞きたかった。勤務する交通機動隊での話は、聞かれなくてもよく喋るくせに。
…エントリーしてるわけじゃないようだ。昔の仲間の手伝いをしてるって言ったかな。それでもたまに練習走行は走ってるみたいだな。一匹威勢のいいのがたまにいるんだよ。と、彼をよく知るサーキットの関係者から聞き出す。
 週末にレースのあるゲルトのオフは、主にウィークデイ。ヘルマンの交通機動隊はシフト勤務、ウィークディには、非番だ。と彼からの電話がくる。
「ようやくコースを走る気になったか…」
ピットで黙々と作業に勤しむ男に声をかける。風はすでに肌寒いというのに、彼はツナギの上を脱ぎ、それを腰に巻いていた。
「…ゲルト」
驚いた声で見上げる顔が、排気のススで少し汚れている。なんでここにいるんだと言いたげに、ゲルトを薄く紫がかった青い瞳が見上げた。
「いや、エントリーしてるのは俺じゃない」
はにかむように笑う。
「残念だ。お前が走ってるって聞いたぞ。ヘルマン」
「まあ、たまに走らないこともないけどな」
彼らの参加しているクラスでは、リアショック、CDIやタイヤなどの変更のほかに、キャブの変更ができる。エンジンの改造パーツを洗っている最中だったらしい。ヘルマンの指に黒い汚れが残っている。その指が照れ隠しの前髪を梳き上げる。
「おい、待て、よごれるぞ」
上下する腕を掴んで止めようとすると、そんなこと、もうどこもかしこもだ。とヘルマンが笑った。
「こんなきったねえ場所に来るなよ」
腕を伸ばして工具を取るヘルマンの、すこし緩めのタンクトップの隙間から、体を流れる汗の一筋が見える。
「しかたない。久しぶりのオフだが、お前がここにいるんじゃな」
行くしかないだろう。と言いかけて、誘惑に負けた。動くたびに隙間があくというタンクトップは、つい触れてみたくなるという欲求に駆られる。
「うわっ…なにする…まだ…」
「…あと、組むだけだろ」
ヘルマンの背後から手を回す。パーツに触れる。ヘルマンの上半身を構成しいてる、一番小さく敏感なパーツ、そっと指の腹で押しそのまま丸く円を描く。ヘルマンの喉が上下する。やめろよと、抗議する唇を塞いだ。ピットの片隅で、しかも食事に出かけていった仲間がいつ帰ってくるかもわからない。足音が聞こえるたびにヘルマンが睨みつける。
「……っくっそっ」
「…洗い終わったなら、組み立ては後からでも出来るな」
閉じている脚にゲルトは体を差し入れる、一瞬だけヘルマンが強張る。けれど体は甘い、どこもかしこも、触れられることを待ちわびていたように、甘くその先を誘惑する。汗の筋を辿り、そのまますそをたくしあげる。残念ながら下半身への侵入は、腰に巻かれたツナギに阻まれた。
「困るんだろ…だれかに聞かれたら」
口元を押さえる手を抵抗を示すように歯を立てられた。中指をヘルマンの口に差し入れる。さらに強い痛みが指を走る。声を漏らさないようになのか、それとも無理やりこんな場所で行為に及んだゲルトへの抗議なのか、けれど次第に熱を帯びた舌が指を這う。唾液がぬらぬらと絡みつく。ときおり強く吸い上げる。浅く吐き出される息がかかる。まるでアレをしゃぶってるようだ。その顔はひどくいやらしい。今日の彼はなかなか強情だ、まだ肝心な場所にはどこにもふれていない。けれど反応のよい体は際限なく高ぶっている。
そのくせまだ…
形のいい筋肉がのった肩の、肩甲骨から指一本下、そこへ唇を落とす。
「…っあ…はっ…あっ」
ゲルトだけが知っている、ヘルマンの弱点。
弓反りにヘルマンの体が跳ね、声を抑えていた唇がゲルトの手を離れる。ずっと押さえられていた快楽の奔流が、口元から流れ出し、止まらなくなる。
ヘルマンのわずかに甘い声音が無意識にゲルトを誘う。
「…すごいな」
強情な耳元へ最後の一撃を落とす。
「くそっ…がまんできねえ」
汚れた手がゲルトの頬にかかる。噛み付くように、いや本当にヘルマンはゲルトの唇に噛みついた。ヘルマンの舌が唇を這う、うっすうらとにじむ血を舐める。彼らしい乱暴な敗北宣言、それを口にするのはよほど悔しかったとみえる。
「俺もだ」
揺れる下肢をゲルトは、腿で押さえつけると高ぶった欲望をヘルマンの尻へ押し付ける。お互いに幾重にも重なった布を通しての物足りない交接、だがここでさかりあうわうわけにはいかないと、最後の理性がブレーキをかけた。
「…そのまえにヘルマン、ひとつだけ聞かせろ。今、楽しいか」
「ああ」
満面の笑みが答える。
「なら、たまには乗れよ」
「…なにに乗るんだ」
それはバイクレースだろうと言いかけてやめた。野暮なことだ。
「…俺に」
乗れよと。もう一度、布の隙間から手を差し入れる。少し汗の冷えた肌は、ひたりと冷たく手のひらへ吸い付く。身代わりの交接、ゲルトは唇へ舌を差し入れる。わずかに赤くさきほど噛まれたときの血液の色が残っている。少し塩辛い、そして中は溶けてしまうように熱く、上気する肌のヘルマンの匂いにむせる。
 彼の仲間が食事に出かけたのは先ほど、一番近いレストランはきっと混んでいる。帰ってくるまでに3時間はかかるだろう、ならば街道沿いのモーテルまで走ってそこから2時間。たった2時間。飢えた男にはそれだけで足らない。ゲルトは車のキーを手にした。
「俺に乗れよ、2時間で天国に連れて行く…いや、2時間ぶっ通しで天国だ」
すぐにイっちまいそうな高回転で心臓がブン回される。
…オーバーレブ、焼き切れそうだ。

[317] はなげさん (2008/10/18 Sat 16:17)

[316] (白赤)タンクトップorTシャツ(どっち?) はなげさん 2008/10/18 Sat 16:16res
┗[317] (白赤)ガソリン (タンクトップver.) はなげさん 2008/10/18 Sat 16:17
┗[318] Tシャツとタンクトップどっちも!どっちも!! 九郎 2008/10/19 Sun 20:33
┗[324] いっそ着ていないのも捨て難し? はなげさん 2008/10/22 Wed 20:19
┗[325] (白赤)スプーンフル(Tシャツver.) はなげさん 2008/10/22 Wed 20:22
┗[326] (オマケ)じゃ、裸で!!(赤白) はなげさん 2008/10/22 Wed 20:32
┗[327] デリヘルくださーい!!! null 2008/10/22 Wed 22:07
┗[328] …orz はなげさん 2008/10/22 Wed 22:22
┗[329] Re^8: (白赤)タンクトップorTシャツ(どっち?) yotsubishi 2008/10/23 Thu 01:16
┗[330] タンク、T、マッパ!! 九郎 2008/10/23 Thu 18:01
┗[331] エロ祭w イーゴ 2008/10/23 Thu 22:20
┗[332] Re^11: (白赤)タンクトップorTシャツ(どっち?) はなげさん 2008/10/24 Fri 21:08
┗[333] Re^12: (白赤)タンクトップorTシャツ(どっち?) G779 2008/10/25 Sat 20:45
┗[334] Re^13: (白赤)タンクトップorTシャツ(どっち?) はなげさん 2008/10/27 Mon 21:21