狂気の沙汰(黄赤・鬼畜注意)

宿題を提出します。まあこれも一種パラレル? だと思っていただければ。……あまりエロくなりませんでしたorz
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「……ねぇ、ヘルマン?」
 同意を促す言葉に、ヘルマンは首を横に振るのみだ。何せ、それだけが彼に許容されている行動だからだ。
 破棄された倉庫の中、頼りないキャンプ用のランプに照らされたパイプベッドの上には、赤毛の青年が両手両脚を手錠でパイプに拘束され、猿ぐつわ越しに呻き暴れるだけだった。
 その下半身は下着から全部脱がされ、縮こまったモノを晒している。上半身はカッターシャツを身につけてはいるが、前がはだけられ、服としての用を為していない。猿ぐつわはしっかりと頬に食い込んでいて、どれだけのきつさで括られているのかがわかる。
「僕は心配なんだよ。あんた結構抜けてるからさ、またどこかで誰かに押し倒されたりしているんじゃないかって」
 マレクは優しく微笑んで、意外に柔らかい赤毛を撫でた。
 両目を目一杯見開いたヘルマンは、懇願するような視線でしきりに訴えている。
「……だって、いつもそうだったじゃないか」
 縮こまった男根を強く掴むと、ヘルマンの体が硬直した。

 最初にヘルマンに会ったのは、アマンダが夕食に彼を招待した時だった。
 交通機動隊時代からの気の合う同僚だと紹介された第一印象は、挫折や差別などとは無縁の、陽の当たる場所で育った真っ直ぐな人間だと思った。実際、気持ちがいいほど直情で正義感に溢れ、マレクや他の移民を差別するようなことは無かった。
 アマンダに気があるのは手に取るようにわかったので、そのスタイルは姉の気を惹くためなのだろうと思っていたが、彼の態度は2人だけの時も決して変わらなかった。挙げ句、マレクがゲルト・フレンツェンのファンだと知るとすごく喜び、しばらくはマレクとゲルトの話をする為だけにアパートを訪れていたぐらいだ。
 夏の日差しのように、どこまでも明るく真っ直ぐな人間。
 マレクがそう認識するのに、そう大して時間はかからなかった。
 だから、まさかヘルマンがひどい挫折を経験していたとは、想像もつかなかったのだ。
 学校で嫌がらせを受けたせいで、帰りがかなり遅くなってしまった時のことだ。繁華街の裏路地を通り、そこの水道を使って服の汚れや顔の腫れの始末をしていた。アマンダは夜勤で今晩帰らないのはわかっていたが、家に帰ってから始末するよりも早めにやっておいた方がいいと思ったからだ。
 蛇口に口を寄せて水をがぶ飲みしていた時、並んでる店の裏口のひとつが開いた。慌ててマレクは乱雑に積み上げられたダンボールの陰に隠れた。顔を覗かせて様子を伺うと、男が2人出てきた。
「……ヘルマン?」
 もう片方の男も見たことがあった。フェニックスのチームマネージャーだ、テレビで何度か映っていたはずだ。ゲルトと友人だと聞いたから、所属先のマネージャーと知り合いでもおかしくはないだろうと思い、声をかけようか迷っていた時だった。
「え……」
 彼らのどこか険悪な雰囲気を他所に、その言葉の端々から、ヘルマンがフェニックスに所属していた元レーサーだったと知り驚く。しかもゲルトに辞めさせられたと。
 知らなかった。彼は、まだアマチュアだった頃からの知り合いとしか言わなかった。レーサーだったことなどひと言も言わなかったし、マレクだとてゲルト以外への興味は薄く、他にどんな選手がいるかなんてあまり気にも留めたことはない。
 そんな時だった。
 ヘルマンにしては珍しく激昂せず控えめに言い争いをしていたが、相手の男に何かを言われた途端目を逸らして大人しくなった。男は楽しそうに嗤うと、街灯の光が届かない塀の方へとヘルマンを押しつけた。
 立ち去るという選択肢は、すでにマレクの頭からは消えていた。積んであるダンボールの隙間から、二人の影がさっきよりも間近に見える。暗闇に潜んでいたせいで目が慣れたのだろう、微かな光でもヘルマンの表情がわかった。
 こんな顔のヘルマンなんて、見たことがない。
 何を囁かれているのか、耳を舐る男の唇が動く度に、嫌悪と羞恥の混ざった表情で息を詰める。それもじきに小さな喘ぎに変わり、下半身辺りで怪しい動きをする男の手に合わせて頭を左右に振る。
 心臓が鳴った。
 彼らに聞こえるんじゃないかと思うぐらい大きい音で。
 血液も同じくらいの音を立てて、こめかみから脳にかけて逆流していく。
 目の前の行為はどんどん激しさを増していった。ズボンを下ろされ、後ろ向きに塀に押しつけられたヘルマンは、夜目に白く映える尻を揺らしながら、突き込まれる楔に声を殺して泣いていた。
 腰を打ちつける音と掠れた喘ぎが、マレクの耳を侵蝕する。
 唾を飲み込んだ。
 熱い。
 自然と手が下腹部へと伸びた。ズボンを押し上げる膨らみを、ジッパーを下ろして静かに解き放つ。音に合わせ、その尻の動きを見ながら手を動かし始める。ヘルマンの喘ぎが、自分のものを押し上げてくる何かにシンクロした。
 快感。
 仰け反り悲鳴を上げかけたヘルマンの口を、男の手が塞ぐ。その姿に不愉快さを感じたと同時に我に返る。
 汚れた手をダンボールで拭い、マレクは携帯を取り出した。最小だったシステム音を最高にし、フラッシュモードに切り替えた。少し離れた所まで戻ると、派手にシャッター音をさせながら近寄る。
「すげー! こんなとこで本番やってやがる!」
 なるべく、不良っぽい柄の悪そうな言葉で揶揄の声を掛けた。
 「ちっ」と言う男の舌打ちと同時に、遠ざかる足音が響いて消える。店の方側を見ると、どこもかき入れ時なのか皿の音や油の跳ねる音が聞こえてくるだけで、誰も出てくる気配はない。
 倒れ込む人影に近づいた。
 身繕いする気力もないのか、ヘルマンはそのままの姿でうち捨てられた人形のように横たわっていた。
「……ヘルマン」
 マレクの声に肩が跳ね上がり、虚ろな目に光が戻る。怖いものでも見るかのように、のろのろと視線が上がった。
「マレ……!!!」
 シャッター音が路地に響く。何度も何度も。フラッシュの光が乱舞する。
 最初は驚いて固まったままだったヘルマンも、何が起きているのか理解すると、片腕で顔を隠し、もう片方で必死にズボンを引き上げた。
「やめろマレク! やめてくれっっっ!!」
 携帯を握る手を下ろす。縮こまるように蹲るヘルマンの姿がそこにあった。
「ヘルマン」
 我ながら冷静な声だ、とマレクは思った。
 釣られたように顔を上げるヘルマンが、驚愕に目を見開く。その綺麗な薄紫の瞳に映ったマレクは、とても楽しそうに嗤っていた。
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[277] イーゴ (2008/10/07 Tue 23:16)

[277] 狂気の沙汰(黄赤・鬼畜注意) イーゴ 2008/10/07 Tue 23:16res
┗[278] 続き イーゴ 2008/10/07 Tue 23:17
┗[279] 申し開き イーゴ 2008/10/07 Tue 23:19
┗[280] Re^3: 狂気の沙汰(黄赤・鬼畜注意) wald 2008/10/08 Wed 00:16
┗[281] Re^4: 狂気の沙汰(黄赤・鬼畜注意) hanage3 2008/10/08 Wed 06:50
┗[282] ありがとうございます〜 イーゴ 2008/10/08 Wed 12:25