一緒に来ていた同僚は、部屋に備え付けられていたテレビで、アダルトムービーを見ているらしい。モザイクというのが、入ってしまうが、日本のものはいろんな種類があるから珍しいのだろう。売店でビールを買ってヘルマンに部屋で飲ませろというと、笑顔でいいっすね！俺、エビスが好き。と乗ってきた。エビスビールは以前に日本のレーシングチームが持ってきたものを飲んだことがあるのだと言う。こっちにはない味でけっこううまかったと。
「アル、ブラッド、飲もうぜ」
もう少し静かに開けられないものか、と思うほど勢いよくヘルマンは部屋のドアを開けた。
「すまないが、風呂であってね。私もいっしょだがいいか」
すでにヘルマンは、座敷に上がり足を投げ出してビールを開けている。
「いいですよ、飲みましょう、飲みましょう」
アルという男がすっと座布団を差し出す。聞いたとおり気遣いのできる男だった。確かに今日の教練でもそうだ。部屋の隅で慌ててテレビを消すのはブラッドか。
「ビデオ、そのままでもいいぞ」
そのほうが面白いかもしれない。ちょうどいいことに変なＶシネマが流されている。くのいち忍法帖、シドウはいいときに入ってきたらしい。
和やかな雰囲気で全員の手元にビールが行き渡った。
「ささやかだが、おごりだ。あと酒の肴に…」
少し離れた場所に座っていたヘルマンの体をぐいっと寄せて、まったく状況の読めていない彼の浴衣の帯を解く。
「えっ？」
はらり解けた帯から浴衣の前が解けると、同僚の二人がまず吹き出す。
「ちょ、ちょっと。それ…」
「……ジャバニーズトライデショナル、亀甲縛り」
ぼそっとブラッドが呟く。
「あ、えっ、ええっ〜〜っ！！！！」
やっと押さえていた笑いを吐き出す。自分が笑いものにされてやっとヘルマンが、シドウに担がれたことに気づいた。
「温泉で泳いでいたからな、罰だな」
アルが隣室に電話をかけている。アマンダにも来いと誘っているようだ。
「うわ、俺、騙されたのか」
ぺたりと座り込む、その足元に全部脱げてしまった浴衣が所在なくしている。それがなんとも艶っぽいのは、たぶん酒のせいだろうか。
「趣味いいですねぇ。これ」
どうやってんの？とブラッドが興味しんしんにヘルマンの体を見に来る。膝を割って股間の紐を見るとまた、盛大に吹き出した。
「…お前、これ、おかしいと思わなかったんだ…」
股間に絡む紐は、玉の後ろと竿の前で結び目をつけられ、そこをわざと強調させている。どう考えても、それはそういう目的で縛ってあるものだ。
「うっ…俺、着物の着方なんて知らないし、マジだとばかり！」
ヘルマンがこちらを睨んでいる。
「気づかんほうがおかしい」
風呂上りの一杯は格別だ。しかもこの若い男は本当にからかいがいがある。シドウは有能な情報網に感謝した。
すでに隣から唯一の女性隊員も駆けつけて、宴に加わっている。アマンダには見慣れたものなのか、彼のイチモツを見ても眉ひとつ動かさず、ビールを一気に飲み干した。
「いや〜これさ〜、また宴会のときにやろうぜ」
「ああ、いいな。ちょっと縛り方見ておくから、じっとしてろよ。ヘルマン」
同僚の二人は、なかなか容赦がない。
「やだ、俺、ぜってぇやらねえからな」
犬のようにヘルマンが吼えた。
数日後、報告書にあわせてニューイヤーパーティの企画書が、メイフォンの元に提出された。
「海外派遣での成果、宴会芸編、あら、またヘルマン？」
------------------------------------------------
今回のオチ担当はメイフォンで。
ヘルマン視点の３人称で書いてたんですが、途中、自分がしばりかったんだということに気がついて、シドウさん視点に変更。結果、すごく難しかったです。
[270] はなげさん (2008/10/06 Mon 23:36)