その後、何十分、何時間と過ぎただろうか。
幾度となくマレクを蹂躙し、犯し続けながらも、ザーギンはどこか拭いきれない違和感を抱え続けていた。
もう何度、この少年の中に精を解き放っただろうか。もう何時間、この少年を貪り喰らっているのだろうか。普通であれば、彼の心はとっくの昔に壊れてしまっていてもおかしくはないはずだ。事実、前回彼を蹂躙した時はそうだった。むしろもっと簡単だった。
なのに今、マレクの目から意志の光が消える気配は全くない。激しく貫かれ、揺さぶられながらも、泣きはらした目でザーギンを睨み続けていた。何故この少年は、何時間にもわたる生き地獄の中にありながら、いつまでもその目に闘志と怒りの炎を絶やさずにいられるのか。
「何で僕が平気なのか、分からないって顔してるね。やっぱりあんたは弱虫だ」
激しく貫かれ続けて息も絶え絶えになりながらも、ザーギンの当惑を見透かすようにマレクが呟いた。
「何だと…!?」
「平気なわけないじゃない。怖いし、すごく痛いよ。死んだ方がマシってぐらい苦しいよ」
そして一旦言葉を切ると、マレクは凄絶な笑みを浮かべながら、喰いちぎらんばかりの万力の力で、自分の奥深くまで貫くザーギンの肉棒を締め上げる。どこに残っていたのかと思うような力での、捻り潰すかのような締め付けは、快楽を通り越して痛みの方が強く、思わずザーギンは顔をしかめた。
「でも僕はその痛みから逃げるわけにはいかないんだ。だって、ここで死んじゃったら罪を償うことができなくなるからね」
そしてザーギンは唐突に思い出した。この眼はジョセフと同じだと。何度打ち倒され、地を這わされても、立ち上がり向かってくるあの愚かしい自分の同類と。
「だから僕は、生き地獄をのたうち回ることを選んだ。守りたい人達がいるからね。そのためなら、どんな苦しみであろうと、耐えてみせるさ」
「黙れ」
「あんたに僕は壊せない。僕の犯した罪は、この程度の痛みと苦しみじゃ、到底償いきれるものじゃないんだ。罪も痛みも、正面から見据えることも受け入れることもできない、あんたごときの与える痛みじゃ、僕を壊すことなんかできない……!」
「黙れと言っている」
ザーギンは片手を伸ばすと、マレクの喉を掴み、ゆっくりと締め上げた。反射的に、マレクの肉穴がザーギンの肉棒を絞り上げるようにぎゅっと締めつける。息が出来ない苦しさに、マレクの顔が再び歪むが、ザーギンを睨みつける目の光が消されることは無い。そしてどこか殉教者のような笑みを浮かべながら、なおも言葉を紡いだ。
「あん…たは、ぼく…が…怖いん…だろう…。だから、こうでも…しないと…」
「それ以上減らず口を叩くと、愚かな世迷い言を発する、その生意気な声帯ごと喉を握りつぶす」
マレクの喉を締める手に、ザーギンが更に力を込める。マレクの口が苦痛の形に歪んだが、自分の首を絞める腕を掴んで渾身の力で引きはがし、ほんの僅かな気道を確保した。
「バカなのは……あんたの方だよっ」
苦痛に顔を歪め、額に脂汗を流しながらも、マレクは口許にどこか勝ち誇ったような笑みを浮かべて吐き捨てた。
「何…?」
喉を絞めるザーギンの手が僅かに緩む。その好機を逃さず、マレクはすかさず追い討ちをかける。
「僕じゃあんたを倒すことはできないし、それどころか傷一つ負わせることだってできやしない。それぐらい分かってるさ。僕は弱いからね。でも、足止めすることならできる……!」
ザーギンはマレクの喉から手を離すと、血と精液に塗れた己の逸物を引き抜いた。痛々しく腫れ上がったマレクの尻の穴から、血の混じった精液がトロトロと溢れ出た。
「あんたを倒す為の切り札が揃うまでの、それまでの時間稼ぎなら、僕にだって出来るんだ……」
「君は……最初からそのつもりで」
「アマンダやヘルマン、サーシャさん達、そしてジョセフが受けた痛みに比べたら、僕のこの痛みなんて、どうってことはないよ…。あんたが僕を倒したら、前と同じようにするだろうって、思ったんだ。そしたら思った通り、あんたは見事に挑発に乗ってくれた……」
マレクは勝ち誇ったように満足げな笑みを浮かべると、震える手で空の彼方を指差した。つられてザーギンが立ち上がり、マレクの指差した方向を見ると、彼方の空に黒い何かが見えた。
並の人間であれば、ただの黒い点にしか見えなかっただろう。だが彼らの文字通り人並みはずれた視力には、それが空を翔る黒いバイク、ガルムであることと、それに乗っているのが、この一連の戦いの最後の切り札、ジョセフであることがはっきりと視認できた。
「見なよ、どうやら最後の切り札が揃ったみたいだ。この勝負、僕の…僕達の…勝ちだ……」
Fin.
[228] wald (2008/09/23 Tue 15:47)