深夜の当直室にて(ザーギン×ジョセフ 医療プレイ)

思わず叫び出したくなる気持ちを抑えつつ、再び部屋の中に目を凝らすと、挿入部分にローションを塗りたくったザーギンが、ジョセフの肛門に器具を押しあてて挿入しているところだった。
 「ひゃっ、冷たい」
 「ほら、じっとして」
 くすぐったそうに身をすくめるジョセフを尻目に、ザーギンは肛門鏡の握りの部分をゆっくりと用心深く握っていく。それにつれてジョセフの中に入れた器具の先端部分が彼の肛門を押し開いていく。
 「うわぁ、こんなに広がっちゃうんだ…」
 こんどは指が入っていない分、ジョセフの肛門は更にぱっくりと大きな口を開けているように見える。あんなに広げてしまって大丈夫なのかしら。
 「うん、中はきれいな状態だよ。傷もないしきれいなピンク色だ」
 口にペンライトを咥えたザーギンが、もごもごとした声で告げる。正直、聞いているこっちの方が恥ずかしくなりそうだ。
 「ひっ!」
 ジョセフがびくりと身体を震わせ、声を上げた。見ると、ザーギンが細い金属の棒をジョセフの肛門に差し込んで、奥の方をつついているようだ。
 「さっき触ったところもよく見えるよ。こうやって触るのもなかなかいいだろう」
 「あ…ん、ひうっ」
 敏感なところを冷たい金属に刺激されて、ジョセフは目を見開いて身悶えしている。口の端から涎を垂らして、目の焦点が合っていない。そんな弟のあられもない姿を、私は喰い入るように見つめていた。あの子があんな顔をするなんて…。
 そうこうしているうちに、ザーギンは満足したのか、器具を引き抜くと付着したローションや汚れを拭き取り始めた。
 「なあ、ザーギン、こうやって遊ぶのもいいんだけどさ、そろそろザーギンのを挿れてくれよ」
 椅子の背に身体をもたせかけて、息を整えていたジョセフが焦れたように言った。無意識になのか、所在なげに自分の肛門に指を出し入れして弄くり回している。ザーギンが心得たように薄く笑むと、鞄に器具をしまいながら何かを取り出した。
 「じゃあ、こっちの方の準備も手伝ってくれるかな?」
 そう言ってザーギンがジョセフの顔のすぐ横に立ち、小さな袋を手渡した。どうやらコンドームの袋のようだ。ジョセフはそれを受け取ると袋を破って中身を手にしたまま、ザーギンのズボンのファスナーを降ろした。そして彼のペニスを取り出すと、彼の股間に顔を埋めた。ぴちゃぴちゃという、猫がミルクを舐めるような水音がこちらにまで聞こえてきた。ザーギンは顔を紅潮させ、ジョセフの髪を撫でているのが見て取れた。彼の上ずった息づかいまで聞こえてきそうだ。
 やがてジョセフが顔を上げると、ザーギンの勃起したペニスがコンドームに包まれているのが見えた。ジョセフの唾液にまみれてぬらぬらと光っている。あまりの卑猥さに目をそらしたくなる自分を叱咤して、中の様子に目を凝らし続ける。
 「よく出来ました。じゃあ次は君にもつけようか。服や周りを汚しちゃいけないからね」
 そう言ってザーギンはもう一つ同じ小さな袋を取り出すと、ジョセフの椅子の前に膝をつき、今しがたジョセフがやったのと同じようなやり方で、彼の勃起したペニスにもコンドームを装着してやった。
 「ここじゃ狭いから、ベッドに移ろうか」
 彼がそう言ってジョセフの足を縛っていた紐を解いてやっているのが見える。縛めを解かれたジョセフはぴょんと椅子から飛び降りるとそのままベッドに上がり、壁を背にして自分から脚を開く。
 「ねえ、早く早く」
 媚びるような潤んだ上目遣いでザーギンを見上げながら、ジョセフは自分の肛門を指で押し開いて誘っている。信じられなかった。あの子があんな淫売みたいな真似をするなんて。
 「仕方ない子だ。ほら、今行くから」
 でも、ザーギンは苦笑いしながら、楽しそうな顔でそんなジョセフに覆いかぶさるようにのしかかっていった。
 そのままジョセフの肛門にペニスを押しあてて、ゆっくりと挿入していく。私は思わず叫び声を上げそうになって、寸でのところで手で口を押さえた。
 「あああ……っ」
 ジョセフは流石に苦しいのかぎゅっと眉を寄せて、ザーギンの首に手を回してしがみついている。そのためにザーギンの表情はここからは見えないけど、荒い息づかいと熱気はこちらにまで伝わってくる。私はドアの脇の壁に片手をついて、自分の身を支えるので精一杯だった。
 「…っはぁ、はぁ、はぁ、全部、入った…?」
 「……ああ」
 応えるザーギンの声も快感にかすれている。彼の声は別人のように聞こえた。いや、彼だけじゃない。ジョセフもだ。いくら再会して間もないとはいえ、ジョセフにあんな顔があるなんて知りたくなかった。ザーギンがあんなことをする人だなんて、知りたくもなかった。
 「ちょっと手を離して。動くから」
 そう言われたジョセフがザーギンの首に回していた手を離す。ザーギンが僅かに身体を起こすと、二人のつながった部分がここからもはっきりと見えるようになった。痛ましいほど大きく口をあけたジョセフの肛門に深々と突き刺さるザーギンのペニス、高々とそそりたつジョセフのペニスが。
 「…あ、あああっ、いい、いいよぉ、ザーギン…っ」
 「……っふ、ジョセフ、君の、中もだ…」
 ザーギンが腰を前後に動かし始めた。ジョセフが顔を喜悦にゆがめ、あられもない声を上げる。ザーギンの眼鏡の奥の目にも、狂気じみた情欲の炎が宿っている。
 もう限界だった。これ以上は見ていられなかった。震える身体を叱咤して、気付かれないように、足音を立てないようにその場から立ち去るのが限界だった。
 大学病院の外に出るや否や、私は一気に駆け出していた。何処に向かうのかわからないまま、めちゃくちゃに走り出していた。もうどうすればいいのか分からなかった。私の両目からはとめどなく涙があふれ続けていた。キャンパスにはほとんど誰もいなかった為、私の姿を見とがめる者はいなかった筈だ。
 走っている間も、私の頭の中では先ほど見た光景と、答えのでない疑問がぐるぐると回り続けていた。
 何故あの二人なのだ。何故彼が私の弟を抱いていたのか。何故私の弟を抱いていたのが、よりによって私の親友だったのか。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。
 もし、嫌がるジョセフをザーギンが無理矢理襲っていたのなら、彼を助け出すために止めさせるという大義名分は立っただろう。迷わず飛び込んでザーギンを殴ってでも止めさせていただろう。だが、ジョセフは悦んでいた。のみならず自分から足を開いて男を誘い、喜んで受け入れていた。そんなところに私が入る余地はあるのだろうか。そんなところに飛び込んでも、私が惨めになるだけだ。
 私を裏切った親友が憎い。弟をあんな淫売にした彼が許せない。でもそれ以上に、更に惨めな思いをすることを怖れて、止める事も出来ずに見ているだけしか出来なかった、私自身がいちばん許せない!
 途中でおかしいと思った時点で、引き返していれば良かったのだ。いいえ、そもそも最初に部屋についた時、迷わずノックして入っていれば良かったのだ。そうすれば、二人とも多少は慌てて戸惑ったろうが、ザーギンなら上手く私を誤摩化してくれて、冗談で片付けてくれただろう。もしそうなら、私が彼らの秘密を、あんな姿を、知る事なんてなかっただろうに!
 気がつくと私は、橋の欄干にもたれかかっていた。どうやら知らない間に街に出てここまで来てしまっていたらしい。
 こんな時間に、こんな場所で女一人、しかも異民がいることがどれだけ危険か私は理解していた。早くここから立ち去らないといけない。私の理性はそう告げていたが、私の心はもうどうにでもなれという捨て鉢な思いで満たされており、その場から動く気には到底なれなかった。
 しばらく何を考えるでもなくその場に立ち尽くしていた時、何か硬い物を引きずりながら近づいてくる足音が聞こえてきた。案の定、というべきか。顔を上げると手に手に鉄パイプや棒切れを持った男達が、私を包囲しつつあるところだった。
 男達が獰猛な目つきで私のことをじろじろと見回してくる。楽しそうな口調で、口汚い罵りの言葉を投げつけてくる。自分がこれから何をされるのか分かっていた。だが私にはもう、何もかもがどうでもよくなっていた。
 気付けば私は、男達を見据えると、やりきれなさとどうしようもない絶望感をぶつけるように、叫んでいた。
 「打ちたければ、打つがいい!」と。

Fin.

[176] wald640 (2008/09/15 Mon 00:35)

[175] 深夜の当直室にて(ザーギン×ジョセフ 医療プレイ) wald640 2008/09/15 Mon 00:35res
┗[176] 深夜の当直室にて(ザーギン×ジョセフ 医療プレイ) wald640 2008/09/15 Mon 00:35
┗[177] あとがき wald640 2008/09/15 Mon 00:37
┗[188] 姉さんっ イーゴ 2008/09/15 Mon 18:22
┗[189] Re^4: 深夜の当直室にて(ザーギン×ジョセフ 医療プレイ) wald640 2008/09/15 Mon 22:28
┗[190] 【小ネタ】詰問中 wald640 2008/09/15 Mon 22:29
┗[192] Re^6: 深夜の当直室にて(ザーギン×ジョセフ 医療プレイ) ガルム 2008/09/16 Tue 01:36
┗[197] Re^7: 深夜の当直室にて(ザーギン×ジョセフ 医療プレイ) hanage3 2008/09/16 Tue 17:41
┗[203] サーシャ、GJ! イーゴ 2008/09/16 Tue 21:11
┗[209] Re^9: 深夜の当直室にて(ザーギン×ジョセフ 医療プレイ) wald640 2008/09/18 Thu 02:12