切望 暴走黒×赤(銀黒前提 修正版001

書き直してる部分かあるので最初から。
でも挿入までにはいってないです。

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塗りつぶされたように暗かった視界が、漸く開けてきた。

其処に現れたのは…。

眼前に現れた融合体に向かって
「てめぇだけは俺が殺す!」咆哮し、武器を振り下ろした。
だが、肉を裂く手応えはない。
逆に振り下ろした武器を掴まれ、体ごと投げ飛ばされた。
飛ばされたままの勢いで地面に背を強かに打ちつけ、息が止まる。痛みに蹲る其処へ、敵は唸りをあげ剣を突き立ててきた。転がり避け、間合いを取る。攻撃を受け止め反撃するためにも武器がいる。投げ飛ばされる際に手放してしまったそれを求め、身構えながら視線を走らせた。その背後に転がっているそれを見つけ、歯噛みする。

スピードもパワーも明らかに競り負けている。
あれをやり過ごし、武器を拾いあげ反撃するまでいけるか。
いや、武器を拾い、反撃し凌駕しないことには仇は討てない。

「やるしか…ねぇんだ…」
正面から突っ込み、動揺した隙を狙って回り込む。
だが正気でない相手に、それが通用しないと気付いたのは後の祭りだった。
みしみしと軋む音が耳についた。
「この…」締め上げてくる手を殴りつけるがびくともしない。逆に更に軋む音と締め上げてくる力が増していき、自ずと酸素が足りなくなる。頭の中に靄がかかり、引き剥がすべく相手の腕へと掴みかかっていた指に力が入らなくなりずるりと滑り落ちた。

このまま…。

突然、締め付けられていた気道が緩み、勢いよく流れ込んできた酸素に咽た所を狙うように鳩尾を殴られ地面に叩きつけられ衝撃で体が跳ねる。息を吐き出し、痛みに堪える中、眼前には望んでいたものが入ってきた。

結果的には問題ない。

震える手で掴み上げ握り締める。

みすみすこの機会を逃してたまるか。

振りかざし、懐に入り込まれないよう武器を振り回し切りかかった。
だが、動じることなくあっさりといなされ、勢いを殺せず蹈鞴を踏む。振り向き次の一撃を打ち込もうと腰を落とそうとする前に、また掴まれ投げ飛ばされた。壁に激突し、後頭部を強かに打ちつけ視界が急激に狭っていく。意識が遠くなりそうになるのを引きとめるべく頭を振る中、腹を突き上げられその勢いで再度、壁に後頭部を打ち付けた。唸る様をよそに額を掴まれ、それを何度も繰り返された。頭の中には嫌な音が響き、眼前に居る筈の敵を視認し把握する事も出来ず、目の前がただ赤く染まっていく。
攻撃が弱まり、ぐったりと壁に凭れかかる体から片腕を取られ、あらぬ方向に曲げられる。痛みに悲鳴が上がりそうになるのを堪え、顔を背けたヘルマンにジョセフが顔を近づけ生暖かい吐息と共に問うてきた。
「なぜ請わない?」
「お前なんかに請ってたまるか…」仇に請うなど矜持いやゲルトの事を思えば尚更だろう。
「そうか…」更に腕を捩りあげられ歯を食いしばり、自由になるもう片方の拳で迫る相手を突き放すべく胸板を叩きつけた。その攻撃が鬱陶しいとでもいうように、あらぬ方向に捻あげた腕を掲げ、壁に叩きつけ刃を突き立てる。鋭い痛みに体を震わせ、唇を戦慄かせようとも俯き悲鳴を耐える姿に首を微かに傾げ再度訊ねた。
「既に一度堕ちているのに何故耐える?」
「俺は、自分の意志でなった訳じゃない!俺は…俺は…」怒りに震え腕に突き立てられた剣を握りしめる姿に肩を揺らし、足もとに落ちていた紅い武器を拾い上げ向き直る。
「なら今度は、実感すればいい」抜こうとする手へ手を重ねてきた。次の瞬間、新たな衝撃に咆哮し、ヘルマンの体が大きく震え、紅く光り融合体から人間の姿へと戻り壁に寄りかかったままずるずると崩れ落ちた。
脂汗を滲ませ、必死に痛みをやり過ごそうと荒く息をつくヘルマンに
「どうだ?」とだけ声がかけられた。
「こんなぐらいで誰が…XATを舐めんな…」睨み上げ、これ以上の出血を防ぐべく腕の付け根を無理矢理抑え付ける。新たな痛みに唇を噛み締め嗚咽を堪えた。
「反撃することも、逃げることも叶わないのにか?」

そんな問題じゃない…。そんな…。

頭を振り、叫ぶ。
「チャンプを…ゲルトを殺した奴に屈してたまるか!」
「奴は自ら殺して欲しいと望んできた」
「それでも殺す必要なんかなかっただろ!!例え融合体だっとしても、ゲルトの内面は、理性は人間のままだったんだぞ!」
顔をあげ喚くヘルマンの濡れた頬へ固い指が触れてきた。ぷつっという音とともに微かな痛みに顔をしかめ、爪をたてられたことに気付く。血と汗が混じったそれが空気に溶け込み消えていく様子をまざまざと見せつけてきた。
「既に人ではない」
粒子となって消えていくそれに苦痛以外の感情が眉間の皺を深くする。
「そんな事は分かってる…」
「完全に理解してはいないだろう?まだ自分は人間の部分が残っていると願いたい。そんな妄想を抱いているからくだらない希望的観測にしがみつく」
これが人間ではなくなった姿だとでもいうように近づけられた顔から視線を背け
「違う!!!」否定する言葉を
「違わない」即座に否定する。変身を解き、ヘルマンの顎に手をかけ、己の方へと向き直らせ視線を重ねたまま問い掛けた。
「なぜ受け入れ、昇華しようと思わない?」
「誰が…」

認めた時点で終わりだろう…。

出血のためいつもの覇気は失っていたとしても、まだ精神は屈してはいない。
その向けられた瞳の色から何かを思い出したかのように
「そういうことか…ザーギン」ジョセフは呟き口元を綻ばせた。
「確かに有効な手段だ。そうか、だからか…」
まるで気がふれたかのように一人呟く姿にヘルマンは頬を引き攣らせ息を飲んだ。
このままここに居るのは危険だと判断し、腕を貫く武器を引き抜こうとするが、流れ出る血で手や足許が滑り、思うようにならない。
そんなヘルマンの姿に気づき怪我をしていない方の腕を掴み壁へと抑えつけてきた。
「お前は弱い」
そんな事は重々承知しているからこそ、怒りを露わにするヘルマンに対し赤い光を宿した双眸が近付いてくる。上半身を壁に張り付けられ思うように動けない中、寄るなと腹を蹴りあげるが、固い感触に顔を歪めた。
蹴り上げた個所だけを融合体へと変化させ、相手の浅慮をあざ笑うかのように口許のみを歪め膝を掴み上げそのまま握り絞め、そして爪をたてられた。
皮膚が裂かれる痛みと音に歯を食い縛る。 その苦悶の表情をもっと見せろとでもいうように顔へと近づいてくる指から逃れるべく頭を振り、その拍子に目眩に襲われ、俯いた。目蓋を閉じても治まらない眩暈に小さく悪態をつく。

原因なら分かっている。血を流し過ぎたせいだ。普通だったらとっくに…。
そうだ。自分は既に。

己の未練がましさに思わず失笑が洩れた。

そうだ。俺はもう。

今は自由の利く指先の感覚も既におかしくなってきている。

それでもだ。これぐらいで…。

殴りつけ叩き伏せるべく拳を強く握り締め、重くなりつつある目蓋を必死に持ち上げ機を伺う。 再度指が伸びてきた。

そうだ。そして顔が近づいてきたら…。

だが、近づいてくる顔は止まることなく、更に近づいてくる。
鼻と鼻が触れ合い、驚き思わず口を開き小さく声を上げた瞬間、舌を差し込まれた。噛み千切ろうとした瞬間、顎を抑えつけられ逆に己の舌へと絡み付かれ吸い上げられた。

なっ…。

冗談でアルとかから男同士でもという話は聞かされたことがある。
だけど自分はゲルトとでさえもふざけあってハグをしあったくらいで。

唇を舐め上げられ、背筋に震えが走る。その間も唇の動きは休むことはなく、寧ろ、驚き震える反応を楽しむかのようにヘルマンの唇を啄み舐めあげ、更には指を喉へと這わせてくる。
薄らと目を見開いた先には、笑みを湛えた顔が見下してきていた。

機を窺うなどという悠長な事は言っていられない、否、これ以上こんな事…。

「ふざけるな!」咆哮し持ちうる限りの力で拳を振り下ろす。殴り付けるはずだった拳はあっさりといなされ、逆に手首を抑えつけられ拘束された。
突き立てられていた剣を引き抜かれ、麻痺しかけていた痛覚が呼び戻され急激に襲い来る痛みに反射的に体が跳ねるが体ごと抑えつけられ、もう片方の腕と共に一纏めに再度打ち付けられた。
骨が打ち砕かれた痛みと軋む音に顔を歪ませる。

[147] イヲリ (2008/09/11 Thu 01:50)

[87] 切望 暴走黒×赤(銀黒前提 イヲリ 2008/08/26 Tue 00:15res
┗[88] まだおわってないんだよぅ イヲリ 2008/08/26 Tue 00:26
┗[89] おっと。 はんちょ 2008/08/26 Tue 07:23
┗[90] かっこよいっす! hanage3 2008/08/26 Tue 15:11
┗[91] Re^4: がんばっノシ イーゴ 2008/08/26 Tue 20:47
┗[103] がんばるぅー! イヲリ 2008/08/27 Wed 17:52
┗[147] 切望 暴走黒×赤(銀黒前提 修正版001 イヲリ 2008/09/11 Thu 01:50
┗[148] 切望 暴走黒×赤(銀黒前提 修正版002 イヲリ 2008/09/11 Thu 01:51
┗[221] 切望 暴走黒×赤(銀黒前提)003 イヲリ 2008/09/19 Fri 17:54
┗[222] Re^9: 切望 暴走黒×赤(銀黒前提 wald640 2008/09/19 Fri 18:38
┗[223] いいっす〜 null 2008/09/20 Sat 00:00
┗[226] Re^11: 切望 暴走黒×赤(銀黒前提 パラディン 2008/09/20 Sat 07:35