ありえない話(指導×赤)

「・・・おい・・・アマンダのパラディンは何処行ったよ・・・」
ヘルマンは、敵の攻撃を避けたときの爆発で視界が遮られ躊躇したのを利用されたのか、666を反転させてしまったせいかアマンダのパラディンを見失った。
「やっべー アマンダに完璧に怒られるな、こりゃ」
666を停止させて呆然としていたところへ、自動小銃を持ったシルバーグレイの髪をした黒衣の男が目の前に現れたため、ヘルマンは666のハンドルを握る手に力が入った。
「・・・ヘルマン・ザルツァ だな」
黒衣の男は、ヘルマンの名前を云うと持っていた自動小銃をヘルマンへと向けた。
「・・・あんた は・・・」
ヘルマンは、どこか聞き覚えのある声に一瞬戸惑い、そしてその声が好きだったのに告白できないまま失ってしまったゲルトの声に似ていることに気付いた。
「・・・ふん。何か言いたげだな」
男はそう言うと、戸惑っている表情のヘルマンに向けて自動小銃のトリガーを引いた。

ヘルマンの戸惑いは自分自身でも信じられなかったらしく、攻撃されるまま男の撃った自動小銃の弾丸をまともに受けてしまい瞬間的に張れるはずのバリヤも張ることなく太股に数発受けてしまった。
「・・・」
小さく呻くとヘルマンは666から降り、銃弾を受けて血が流れる足のまま男に向かって行く。
「・・・あんたは 何者だ? どうしてそんなにゲルトに声が似てる?」
無防備すぎる状態のままヘルマンは撃たれた片足を引き摺りながら、男の前まで行く。
「・・・無防備すぎるぞヘルマン。貴様はアホウか」
男は、そう言うと眉間に皺を寄せ再びヘルマンに向けて自動小銃を撃った。
しかしヘルマンは、その攻撃を避けることがなかった。

融合体として人間よりはるかに再生する力があったとしても、自動小銃の銃弾を一度に何発も太股と腹に受けてしまえば簡単には再生できず、ヘルマンはその場に倒れこんでしまった。
「・・・うぐぐっ」
ボタボタとあふれ出る血が床を汚し、その血の海の中へルマンは立ち上がり目の前の男から逃げようとするが、男は無言のままそんなヘルマンを見下し、血に汚れた腕を掴んで強引に立ち上がらせようとする。
「・・・ダメだっ! オレに触るなっ! 感染しちまうっ!」
そんな状態なにのも関わらず、ヘルマンはゲルトの声に似た自分を撃った男を心配し、自分の血に汚れた手を掴もうとした男を拒絶する。
「貴様は本当にアホウだな。俺が貴様に何をしたかわかっているのか?」
片腕でヘルマンの手を掴み持ち上げ、吊り下げるようにしてヘルマンの顔をじっと見て男は皮肉たっぷりに囁く。その声は、どう聞いてもゲルトのものでしかなく、ヘルマンの顔は苦しいだけでないもので歪んだ。
「・・・オレを殺したいなら・・・さっさと殺せばいい。こんな方法じゃなく確実な方法ぐらいしってるんだろう? ツヴェルフの人間なら」
自分が融合体で、この目の前のゲルトの声に似た男が自分に対して敵意を持っているのは当然だと思っていたヘルマンはそう返事をするしかなかった。
「そう簡単に死ぬことができるのか? デモニアックの体の貴様が。そう考えていたとしたら、貴様は相当低脳だな」
口元が皮肉な笑みの形に歪み、男は言葉を続けた。
「それに、俺は人間じゃなくサイボーグでね? これくらいじゃ感染しないんだよ」
男はそう言うと、ヘルマンの腹にもう一度、自動小銃の銃口を向けトリガーを引いた。

「・・・なん・・で・・・ あんた・・ は・・・」
ヘルマンは、何故自分がひとおもいに殺されないのか困惑していた。
自分が融合体だと、既に自分は認識されているはずなのに、ツヴェルフからしたら666を奪った犯人でもあるのにと、ヘルマンは襟ぐりを掴まれ引き摺られながら必死になって考えたが答えが出せるはずがない。
「・・・黙れ。今度喋ったら、その口に銃弾を打ち込むぞ」
男の力はヘルマンを軽々と引き摺り、血に汚れた修道服にそって床にもその血の跡を残してゆき、直ぐ側にあった格納庫のドアを開きヘルマンを投げ入れ、その男も中へと入ってゆく。
ビシャリと布が湿った音がすると、ヘルマンは床に叩きつけられた。
貫通することがなく、銃弾は体内に残ったままの状態だったが、少しずつ体は治り始めていたのだが、ヘルマンはどうにも自分の体が動かし難いことに気付き、人間だったころには到底出来なかった技で、自分の体内をサーチして、自分の体の中に残されている銃弾が、まだアンチナノマシンが完成していないため、応急処置として対デモニアック用にでも作られた水銀入りの銃弾だったのだとわかり顔を歪めた。
「・・・生殺しでも、するつもりか」
顔をあげ、ヘルマンは男をギロリと睨む。と、同時に
「・・・俺が喋った言葉もわからんようだな。融合体」
と男は表情も変えず、ヘルマンの喉下に、持っていた自動小銃ではない腰に下げていた拳銃で一発だけ撃ちこんだ。

「・・・うぐ・・ぐうぅ・・・っ」
血反吐を吐き、更に修道服を自らの血で汚しヘルマンがくぐもった呻き声を上げる。水銀入りの弾丸は、治癒する速度を遅くするだけで基本的には体にあまり影響はないが、目の前の男の声がどうにもヘルマンの行動制限を縛ってしまう。目の前の男は声だけがゲルトに似ているだけで、ゲルトとは別人なんだと認識はしていても、ヘルマンはどうしても目の前の男に対して抵抗することができず困惑していた。それはまるで、魂にゲルトの声が解けない鎖のように絡まりつき、その声を聞いただけで身動きできないようになってしまっているようで。
「愚かだなヘルマン。融合体になっても、過去の・・・人間だった頃の記憶に縛られている。他の融合体どもは、それを昇華して悪魔に成り下がったというのに」
男はヘルマンが何故、こうしてされるがまま身動きできないのか理由を知っているようだった。
「・・・だが、そこが貴様の善い所なんだろう。良くも悪くも・・・な」
男は苦しげな表情で吐血を続けるヘルマンの襟元を掴み、引き上げて自分の顔と同じ位置にヘルマンの顔を持ち上げるとそう言ってニヤリと見下した笑いを浮べ、そのまま床へと押し付けた。

[132] 733@ゼンガー (2008/09/09 Tue 01:54)

[132] ありえない話(指導×赤) 733@ゼンガー 2008/09/09 Tue 01:54res
┗[133] ありえない話(指導×赤) <2> 733@ゼンガー 2008/09/09 Tue 01:56
┗[135] Re^2: ありえない話(指導×赤) hanage3 2008/09/09 Tue 16:43
┗[137] Re^3: ありえない話(指導×赤) 733@ゼンガー 2008/09/10 Wed 09:04
┗[139] Re^4: ありえない話(指導×赤) はんちょ 2008/09/10 Wed 19:19
┗[141] Re^5: ありえない話(指導×赤) 整備員 2008/09/10 Wed 19:46
┗[149] Re^6: ありえない話(指導×赤) 733@ゼンガー 2008/09/11 Thu 15:53
┗[150] Re^7: ありえない話(指導×赤) wald640 2008/09/11 Thu 17:39
┗[151] 鬼畜GJ! イーゴ 2008/09/11 Thu 19:41
┗[163] 今日中に頑張れ、3班ゼンガー。 733@ゼンガー 2008/09/13 Sat 17:07