続き

床がおびただしい粘液に濡れてぬめる。
「きみの選んだものが抵抗なら、ずっと抵抗していればいい」
いつの間にか、彼らの中に混ざった支配者が、ヘルマンの耳元に囁く。すでに何度となく欲望に敗北し、そのたびに自身の弱さを揶揄された。
「私はきみに応えよう、ヘルマン」
後ろから羽交い絞めをされるように貫かれる。身をよじるがそこから逃れることはできず、動くことが更なる欲望を暴きだす。貫かれた体の奥が熱くなり、もっと違う刺激を求めて勝手に下肢が揺れた。
「っつ、ぐぁっ…はっっ」
「もっときみに苦痛を与えることができる」
ザーギンが目で先ほどからジョセフを責めているマレクに伝える。少年は支配者の欲望の従者となった。暴かれ、仕込まれ、けれど望んでいたことを自分自身で知った。ジョセフの偽善を暴くことはマレクの悦しみ、そしてもうすでに用意の整ったジョセフの体をザーギンへ差し出す。
「……な、なにを」
うっすらと開いたジョセフの唇が小さな声で不安を告げる。
「ジョセフ、この男を壊してあげよう」
マレクが無言のまま、勃起したそれをすでにザーギンが入り込み塞いでいる場所へと押し付けた。やっと意味することを知り、ジョセフが首を振る。
「ずるいなぁ、二人だけだったらしようとしてたことでしょう」
からかうようにマレクが言う。そんなところに2本も受け入れたら、本当に壊れてしまう。とジョセフはザーギンを見上げた。
「ほら、こんなにも欲しがっているのだから、応えてあげなくては」
「…はっ…ぁっ…」
ヘルマンの顔が苦しそうに歪んだ。蟲、あれを入れられると、どんなことでも快楽になってしまう。そうやって何度自分を失っただろうかと、ジョセフは思った。まだ身の中に蟲がいやらしく蠢いている。
「もうお前の役目などないのだよ、ジョセフ」
優しい声がジョセフを撫でた。
「…うぐぁああっぁあああっ」
限界まで広がったそこをさらにジョセフが広げていく。小さく嫌な音がして2本の男を受け入れていたヘルマンの両端が切れた。
「うがっ…かっ……っはっ…あっ…」
赤い血が流れて水溜りを作る。ヘルマンは二人の男に挟まれながら、その苦痛を受け入れていた。快楽をはるかに上回る苦痛に心が救われる。痛みを感じていれば、まだこの狂った世界のなか、怒りを忘れないでいられる。
「…ぁあ…は…」
血にぬめるそこは、もう一人の欲望の存在を感じさせる。蠢いている男の欲望が、ジョセフを真っ暗な闇の底へ引きずり込むうような快楽を覚えさせる。背中を上る鳥肌にも似た激しい快楽に自失しそうになる。ぴちゃぴちゃと血を舐めているマレクが見える。真っ赤な唇がうっとりと支配者の名を呼ぶ。
「ザーギン様、すばらしいです」

 まったくね。とエレアはベアトリスに囁いた。
「わかっていないのは、あの二人だけなのです」
困った子達なんですとベアトリスはため息をつく。
広間の片隅にしつらえた瀟洒な椅子やソファは、この二人の観覧席である。
「救いはだれにでもあるわ。それが分からないなんて、なんて愚かなんでしょう」
エレア用には、ドールハウスのものの可愛らしいティーカップが使われいる。優雅に足を組みお茶を飲む女たちは、口々に2人の愚かしさについて語り合った。
 愛する人と仲間を失ってなお、憎しみゆえの怒りを保ち続けることは実はとても難しいのだ。忘れ難い記憶と思っても、時間がそれを癒していく。やがて命が終わる。それを果たして彼が望んだだろうか。と。
 そして、この変わってしまった世界をすべて自分のせいにしたい男には、その世界でいつまでも生きて絶望する罰を与える。
「たしかに、私を含めここにいるものは、あの方によって救われているのですから」
かつての世界は失われたが、だれにも同じく救いを。
「ザーギンは優しいのよ、だから」
エレアとベアトリスの見つめる先には、淫靡で美しく慈悲深いひとつの結末がある。

[105] hanage3 (2008/08/28 Thu 18:16)

[104] (銀黒×赤+黄 注:4P)美しい結末(if結末) hanage3 2008/08/28 Thu 18:15res
┗[105] 続き hanage3 2008/08/28 Thu 18:16
┗[106] Re^2: (銀黒×赤+黄 注:4P)美しい結末(if結末) hanage3 2008/08/28 Thu 18:20
┗[107] 素晴らしい! 640 2008/08/28 Thu 18:33
┗[108] Re^4: こ、これは! イーゴ 2008/08/28 Thu 22:33
┗[109] Re^5: (銀黒×赤+黄 注:4P)美しい結末(if結末) hanage3 2008/08/29 Fri 00:51