夕暮れに紅く染まる街並みを、低いエンジン音をさせながらヘルマンは愛車で走っていた。
今日は早番上がりであるが、実は昨日から家に帰っていない。帰宅しかけた所に融合体発生の報が走り、今の今まで町中を走り回っていたのだ。
ようやっと落ち着いた所で上がることにしたのだが、昨日のように着替えてる最中に呼び出しをくらうことに懲りたのか、それとも疲れ切って面倒だったのか、XATの制服のままだった。
近道の路地を抜けようとした時、見慣れた人影を見つけてヘルマンはスピードを落とした。
「おい、マレクじゃないか。どうした?」
相棒の弟が、自販機の前に膝をついて途方に暮れている。
愛車を止めて近づくと、妙にボロボロになった姿が目にとまった。眉をしかめてしゃがみ込み、顔を上げたマレクと視線を合わせる。
「……また、イジメられたのか」
マレクは黙って首を横に振る。
現在のこの国では、移民の増加とそれに対する差別や暴力沙汰が絶えない。マレクも『異民』と差別される側の一人だった。密かに思いを寄せているアマンダの大事な義弟であることを差し引いても、弱い者をいたぶる行為はヘルマンの最も嫌う所でもあった。
「鍵を……」
「ん?」
「うちの鍵、落として……それで……」
紫色に腫れた頬が痛々しい。それでも弱音を吐こうとしないマレクに、ヘルマンも気づかない振りをしてやるしかない。
「この下か?」
躊躇うように、小さくマレクの頭が動いた。
自販機は建物の陰になっていて、隙間を見通せるほど明るくはない。ヘルマンは制服のポケットから小型のペンライトを取り出すと、膝をついて照らしてみた。かなり奥の方に、一瞬だけ光を反射したものがあった。
「あれか?…………ん、腕が入らんな」
いつも制服の上から羽織っている革ジャンを脱ぐと、マレクに預かってもらおうと振り返った。
「どうした?」
マレクは驚いたような表情でヘルマンを見ていた。夕陽の色が映ってるのだろうか、心なしか顔が赤いように思えた。
慌てたように首を左右に振って革ジャンを引き取るマレクに、ヘルマンは首を傾げた。まあいいかと思い直し、腕を自販機の下に突っ込んだ。
「ん、むっ…………くくく……」
両脚を開き、上半身を伏せるようにして肩まで潜り込ませる。時々頭を下げて覗き込み、位置を補足しながら精一杯腕を伸ばした。
パシャ
微かな音が聞こえた気がして、ヘルマンは身を起こして振り返った。携帯電話を握ったマレクが、慌てたように蓋を閉じる。
「……マレク?」
「あ、そ…………その、姉さんに連絡…………」
ああ、とヘルマンは頷いた。彼が上がる時に、アマンダは「報告書を上げたら帰る」と言っていたのを覚えている。そろそろ帰り着く頃だろう。帰宅して弟がいなければ心配するに違いなかった。
「おう、俺が送ってくから安心しろってアマンダに伝えとけ」
ニッと唇の端を吊り上げて笑うと、再度自販機の下をさらう作業に戻った。
頭を地面に付け、高々と尻を上げた格好をしたヘルマンは気づいていない。マレクの携帯に備わっているムービーモードが起動していることに……
[25] イーゴ (2008/08/17 Sun 21:14)
柳生さんのリクにお答えしてみましたノシ
正味30分で書いたシロモノなんで、所々文章おかしいのはカンベンですよう〜
[26] イーゴ (2008/08/17 Sun 21:15)
稀狗の…っ!
その動画みんなに送信してくれよーっっっ!
見たいぞ…っマジでっ!
既に感想になってない罠。
[27] 636/マシュー (2008/08/17 Sun 21:41)
ああ〜すごいです。
稀句…どこで配信してるんだw
[28] null (2008/08/17 Sun 22:01)
ありがとうございます!!
無防備ヘルモン鬼萌でっす!!ってか、マレクの機転のよさにグッジョブですよう!!!
かわいいいーーーーー!!!!!
[30] 柳生 (2008/08/17 Sun 22:32)
うっはw
オイラにもそれ送ってマレクーーーー!
ああ、天然すぎるヘルマンと、XATのエロスーツの組み合わせは最強すぎる…!
[31] 603:ヘタレ班長 (2008/08/18 Mon 00:29)
きっと姉さん経由でXAT全隊に送られているのだと妄想しました。
すばらしいです。
イーゴ様のマレク。
[34] hanage3 (2008/08/18 Mon 05:23)