No.32への返信

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  • (融合前の銀・黒・姉)はじまりのうた(清いキスのみ

    小さかったころ、童話のかわりにとそれぞれの街にいる守護聖人のお話を聞いた。夜の祈りを捧げる前の、それはささやかな幸せの時間。神父様とやさしかったシスターハンナ、その守護聖人がこの街にも現れたのだと思っていた。
     教会の仕事とスラムに住む子供たちの様子を見て回ると、ちょうど正午を過ぎるくらいだった。それから姉の通う大学へ向かう、いつも講義が終わると彼が学校の前で待っていてくれるのだ。ジョセフの格好はお世辞にも清潔であると言い難く、学生には見えないので一人で中に入ることができない。そのことを話す前に彼はわかっていた。そして、万に一時の僥倖で出会うことが出来た兄弟なんだからと、姉の通う大学に誘ってくれた。仲の良い兄弟を見ているのは、楽しいのだと。
    「こんにちわ、マドワルドさん」
    しかし、ジョセフは知っている。彼は姉のことが好きなのだ。
    「やあ、ジョセフ。お昼はまだかい?」
    ジョセフがうなづくと彼は微笑んで、構内にある庭園に行こうと言った。
    「サーシャがおいしいサンドイッチをご馳走してくれるよ」
    「いいの?」
    「もちろんだとも。サーシャは君のために作ったんだからね」
    やさしい声、眼鏡のむこうの穏やかな瞳、ことサーシャに対しては恥ずかしがりやな所も、ジョセフは好きだった。
     大学はこの街でも古い歴史のある建物で、中に入ると小さな街があるかのように広い。公園がいくつかあり木々に囲まれて美しい花が咲いている。ジョセフには珍しいものばかりで、何度通っても飽きない。図書館には本がたくさんあるのだという、市民にも開放されているから、君の読む本をいくつか持ってこようと、彼が言ってくれたのもうれしかった。
    「ジョセフ、ザーギン!」
    にこやかに手を振る姉がいた。
    「行こう、サーシャが待ってる」
    「うん」
    姉さんと彼はお似合いだと思う。研究者である聡明な姉に医者のたまごである優しい彼、未来に待つ幸せを祈らずにはいられないくらいに。
     明るい庭園の大きな木の下、木々の緑と青い空、レンガづくりの壁、昼休みのわずかな時間、楽しそうに話す二人の邪魔にならないように、ジョセフは食事に夢中なふりをした。

    ……やっぱり、ジョセフを学校に通わせたいの。
    ……そうだね。あの、身元保証人さえいえばなんとかなると思うんだ。
    ……でも、私は…市民権があるけど元移民だから。
    ……僕がなるよ。
    ……いいの?
    ……もちろんだよ、できれば…

    しかし二人はジョセフのことを話している。もっとがんばれ、マドワルドさんと。こっそりと笑った。

    ……できれば、学費も
    ……そんな、悪いわ。
    ……仲の良い兄弟はいっしょにいてほしいんだ。やっと会えたんじゃないか。
    ……ダメよ、そこまで甘えたら。それに研究員のお給料でなんとかなるわ。

    好きだって言えばいいのに。とそこまで考えてジョセフは、二人が恋人になったら、いや夫婦になったら、自分は二人の何になるのかなと思った。確かに彼のようなお兄さんがいたらいい。あんまり二人がりっぱすぎるから不肖の弟になってしまうけれど。
    …家族って素敵だな、ぽつりとジョセフは呟いた。

    「ジョセフ、どうしたの。私はもうジョセフが家族だって思ってるのに」
    不意に抱きしめられたやわらかい姉の腕、いいにおいがした。やさしいぬくもりと懐かしい感じがした。
    「くすぐったいよ、姉さん」
    「ジョセフ、他にもしてほしいことはない?」
    微笑む瞳には、少し悲しい色も混じっている。ジョセフと同じ、きっと姉も孤独だった。ジョセフには神父様とハンナが居たけれど、姉には同じように見守ってくれる人はいたのだろうか。おやすみのキスしてくれる人は。
    「う〜ん、たまには休んで。ずっと働きっぱなしだから」
    「大丈夫よ。まだ若いんだから」
    「いや、僕からもお願いするよ。君が倒れたら心配だ」
    「あ、やだ。もうこんな時間」

    ごめんね、またねと姉は小走りに構内へと戻っていった。相変わらず忙しいのだ。そしてその限られた時間をやりくりして、弟との時間をつくろうとする。まるでそれは過去を埋め合わせているような。

    「ジョセフ、してほしいことがあったら、僕にも言って」
    姉を見送ったあと、彼が笑って言った。さっき身元保証人になると申し出てくれたそれだけでジョセフは十分だったのに。学校に通うなんてもう諦めていた。それだけで十分過ぎるほどの願いだ。
    「僕でよければ…だけど。君たちの家族になれるかな」
    「それ、言う人を間違えてるよ」
    直接姉さんに言えばいいのにと、思った。きっと彼なら姉さんを幸せにしてくれるだろう。
    「…厳しいなあ」
    彼は照れて笑った。
    「じゃあ、ひとつだけ」
    「なに?」
    ジョセフの問いかけにうれしそうに答える。照れ屋の眼鏡の守護聖人。
    「おやすみのキス、子供用」
    「なるほど」
    「大人用は姉さんに」
    まだ昼だけど。と続けるジョセフの唇に軽くついばむようなキスが落ちて来た。
    「愛してるよ、僕のかわいい弟」
    触れ合うだけですぐに離れた唇の感触に、それでもびっくりしているジョセフは、彼をからかったお返しをされたことに気がついた。
    「それ、子供用だからね」
    にっこりと彼が笑う。金の髪が日差しに柔らかく解けてそれはまるで天使の輪のようだ。祝福のキス、なんて優しいお返しだろう。でも今度はジョセフの方が照れてしまう。こんなにさりげなく愛してると言われて、きっとそれは家族に対しての言葉だけれど、ジョセフには初めての言葉だった。
    「おでこだろ、普通は」
    「マドワルド家ではそれなんだ」
    からかったわけじゃないよと。

    あの日、トラックから降りてくる彼が、きっとこの街の守護聖人になるのだと思っていた。

    [32] hanage3 (2008/08/18 Mon 05:16)


    まだピュアです…

    融合前はあんなヘタレ眼鏡だったのに…ペイルホース恐るべし。

    イーゴ様、銀様がもんもんしていなくてすみません。どっちかというと黒がもんもんしそうです。

    [33] hanage3 (2008/08/18 Mon 05:20)


    Re^2: ほのぼのw

    いや〜〜〜、いいですよw
    なんか春の日だまり見てるカンジで、かわいいです♪

    これから2人ともサーシャ挟みつつ、もんもんとするわけですねw

    [39] イーゴ (2008/08/19 Tue 12:26)


    もんもんとするわけですよ!

    融合前は

    ジョセフ→ザーギン

    融合後は

    ザーギン→ジョセフ

    な感じがします。ザーギンなんだかんだでジョセフをかまいすぎですよね〜

    [56] hanage3 (2008/08/23 Sat 17:27)