ゲルトは英雄、ヘルマンは漢、ポエム嫌い=>即刻退避。
絵描きの文なのでレベルがアレな感じなのもご容赦。
そしてむしろ読んでる人への羞恥プレイ。
あと、シャワーシーンネタということで某様とかぶってしまっている事を深く反省しつつ、懺悔のつもりであぷします。
ご迷惑おかけしました〜。
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表彰台に上がる度によく聞かれるお定まりの言葉がある。
何がしたいか?
何が欲しいか?
誰に伝えたいか?
陳腐に繰り返されるこれらの問いかけに、真面目に答えなくなったのはいつからか。
正直答えに困る。
いつからそう思うようになったのか、今でははっきりとは覚えていない。
「いい加減にしろよ、ゲルト」
「何がだ?」
夜半、居残りで偶然ハチ合わせた青年を狭いタイル張りのシャワー室に連れ込み、所謂情事へともつれ込んで既に15分が過ぎていた。
他のメンバーは数人を残して大半が帰宅し、既に事務所は静けさを取り戻している。
嫌がる素振りの彼をいなしながら肌に触れるのに必要以上の時間を費やしたのは、ここの所の遠征でスレ違いが多かった為だ。
人目を避けて二人になれたのもつい先ほどの事で、更に、明日からまた始まる遠征で、またしばらく会えなくなる事もわかっていた。
言い訳をするつもりもないが、そういった理由で自分としては呆れる程性急に誘いをかけた事には間違いはない。
「……嫌だって」
服をはぎ取られ、シャワーブースに押し込まれても尚、この後訪れる行為を暗に拒否する姿勢は珍しく、神経質なまでに頑だ。
「今更だろう?」
腰に腕をまわして巧みに壁際へ追いつめながら耳元に囁くと、青年の肩がひくりと持ち上がる。
試しに舌を延ばし、届く距離にあった耳朶の淵を舐めると、小さな吐息が漏れた。
これは拒否ではない、と経験が語りかける。
それに本気で嫌がっていれば、有無を言わさず無駄に器用な足裁きでとうに蹴り倒されている。
「……」
「ヘルマン」
「……」
「……」
応えを促すように廻した腕で背を撫で上げると、背けた唇がぽつりと言葉を漏らす。
「……だって、あんた、すぐ中に出したがるじゃないか」
何もこんな場所でわざわざ今、と横を向いたまま更に不満げにボソボソと続ける彼の視線は泳いでいる。
完全に無人となったわけではないここで行為に及ぶのに抵抗がある等という、まるで生娘のような物言いに笑いがこみあげる。
行為ではなく場所を否定する辺りが、いかにも生真面目な彼らしい。
「気にすることじゃないだろう?孕むわけでもあるまいに」
年に似合わない少々幼い物言いを揶揄するように軽口を叩くと、かけた言葉に呼応するように弓なりの眉が吊り上がる。
すかさず飛んで来た拳と捕らえる手で無駄な攻防戦を繰り広げながら、更に含み笑う。
「アンタはいいだろうがな…!」
こちらの抑えが効かなくなるとどうなるかをよく知っているだけに、今の彼は必死だった。
以前、少々の諍いも悪さして酷くしてしまった後、出先に愛車を置き去りにして帰らざるを得なかったことがある。
ましてや、明日から今度は彼がマシン調整がてらの地方遠征で、今日は是が非でも準備の為に帰宅せねばならない。
己が別の仕事と重なっている事もあり、代打とは言え、これが彼にとって初めてトップで走ることになる大事なレースだ。
心持ち上気した頬を隠しもせずに吠える青年の腕をようやくの事で掴んで引き寄せると、噛み付く程に顔を近づけて、くるくるとよく動く薄い紫の瞳を覗きこむ。
「丁重に送ってやるさ」
唇が触れ合う程の近さでそう言うと、齧りつくような勢いで青年が吼えた。
「…お断りだ!」
既に丸裸にされておきながら高潮させた頬でまだ憎まれ口を叩く唇を笑いながらそのまま塞いで、しばし息を奪う。
最初は酒の勢いとか、そんなものだったと思う。
互いの性癖も確認せずに雪崩込んだベットの中で初めて抱いた男は、翌朝の多少きまずい言い訳の応酬を除いては、何の違和感もなく自分を受け入れた。
その後もだらだらと関係は続き、もう一月余りになるか。
[182] ヘタレ班長 (2008/09/15 Mon 08:04)